
1960年代後期、英国。
サイケデリック・ムーブメントの金字塔であり、1970年代プログレッシブ・ロックの最高峰“ピンク・フロイド”のギタリスト、デヴィッド・ギルモアでございます。
「スタジオにこもってパーフェクトな演奏ができたと思っても、次の日聴きなおすと、何もいじってないのに全然違う音に聴こえるんだ。それも全然良くなくね。そうなるとギターも何もかも取り替えて録り直しってわけさ」(デヴィッド・ギルモア談)

1944年3月6日、イングランド、ケンブリッジでデヴィッド・ギルモア(David Gilmour CBE)は生を受けた。
58年、14歳のときに隣人から借りたアコースティック・スパニッシュ・ギターが、最初に弾いたギターだった。そして両親がプレゼントした
ピート・シーガー教則レコード“Pete Seeger Teaches Guiter”により、ギルモア少年の腕はめきめき上達したという……。
上記教則レコード含めレコードを聴きまくっての全くの独学であり、最初に聴いたのは
レッド・ベリー、
ハウリン・ウルフ、
ボブ・ディランなどのフォークやブルースだった。
60年代に入って、
B.Bキング、
ハンク・マーヴィン、
ピーター・グリーン、
エリック・クラプトン、
ジェフ・ベック、
ジミ・ヘンなど、ロックン・ロールへと興味が意向する。

ケンブリッジ高校に進んだデヴィッド・ギルモアは、
シド・バレットと出逢う。
当時の二人は、ブルースや
ビートルズ、
ストーンズを聴きながら腕を磨き、ともにステージに立ったこともあったそうだ。
1965年シド・バレットはケンブリッジ高校卒業後、建築学校(リージェント・ストリート・ポリテクニック、現ウェストミンスター大学)へ進学、そこでロジャー・ウォーターズらと出逢う。
一方、残ったデヴィッド・ギルモアはR&Bのコピー・バンド、ジョーカーズ・ワイルドを結成。

1968年、シド・バレット(G)、ロジャー・ウォーターズ(B)、ニック・メイスン(D)、リチャード・ライト(K)のピンク・フロイドの一員となった。
デヴィッド・ギルモアのデビュー・レコードは『神秘(A Sauceful of Secrets)』からである。デヴィッド・ギルモアがピンク・フロイドに加入したいきさつは、シド・バレッドのドラッグ問題であり、活動に支障をきたしていたシドを補うためだった。実際、『神秘(A Sauceful of Secrets)』の録音中、69年シドは正式に脱退した。

「パブで飲んでいたら、ギルモアが入ってきて週給25ポンドでピンク・フロイドとのギグを決めてきたって、いうんだ。シド・バレット無しのピンク・フロイドなんてすぐにポシャってしまうに決まってるから、もらえるものはもらっておけっていってやったよ。でも、それは大きな間違いだったな。」(
ジョン・エスリッジ談)

シド・バレット脱退後のバンドはサイケデリック・ロックから脱却し、直感的な即興音楽を捨て創造性の高い楽曲構成を追求しはじめる。
以後のピンク・フロイドについては、
過去記事を参照されたい。
余談ではあるが、シド・バレット脱退に伴い新しいギタリスト候補としてジェフ・ベックに白羽の矢を立てたが折り合いがつかず、「ウマが合った(メンバー談)」デヴィッド・ギルモアを起用したとされる。
ピンク・フロイド以外の活動も盛んで、1970年代に
ケイト・ブッシュを見いだし、デモ・テープ作りからステージ演奏まで、全ての面倒をみた。
また、2003年には、これまでの音楽活動やチャリティー活動の功績が認められ、CBE(上級勲爵士)を授けられている。

デヴィッド・ギルモアのギター・スタイルは、前述したようにフォークやブルースを基盤とした“間”と“メロディー”による、シンプル&エコノミックなメロディック・フレーズ&パワフル・トーンが秀逸であり、それこそが彼をロック界最高峰ギタリストに位置づける要因となっている。
「彼にウクレレを渡してみろよ。ストラディヴァリウスのようなサウンドにしてしまうから! 彼ほど完璧な手をもった奴とは仕事したことがないな。」
とは、プロデューサー、
ボブ・エズリンの弁である。
リード・プレイでは時流に流されることなく、早いライン・プレイよりも、トーン、
チョーキング、
ヴィブラートといったブルース・フィーリングあふれるフレーズを歪ませないクリーン・トーンでパーカッシブなピッキング・ニュアンスを強調させるために、フェンダー・ストラトキャスターのリア・ピックアップのみで演奏する。
さらにセンターとフロント・ピックアップの中間で
オルタネイト・ピッキングするが、左手の
ハンマリングを交え、スピード感を変幻させる。
ブルースから影響を受けた、彼の定評あるチョーキングは控えめなクォーターから2音半に及ぶオーバー・チョーキングまでを、微妙に細やかに使い分ける。
それらの正確無比なテクニックに加え、スライド・プレイ、変則チューニングのドロップD(D、A、D、G、B、E、低音から高音)や、(D、A、D、G、A、D、低音から高音)、3~6弦(E、A、D、G)だけ細い弦に張替え、オクターブ高く(6弦は2オクターブ)チューニングする“ナッシュヴィル・チューニング”も特徴的で、独学とはいえコードとスケールの関連性に卓越したギタリストでもある。

デヴィッド・ギルモアが最初に自分のものにしたギターは、アーチド・トップにfホールの空いたアコースティック・ギターで、ピック・アップをつけて演奏した。
その後21歳の誕生日に、アメリカ旅行の土産として、両親からフェンダー・テレキャスターを贈られたが、その一年後ギルモア自身が初のアメリカ旅行に出かけた際、航空会社が紛失した。
彼のトレード・マークといえるギターは、メイプル・ネックの84年ヴィンテージ・シリーズで1957年のストラトを再現した赤いモデルに、EMG SP・PU、EXGエキスパンダー、SPCミッド・ブーストを搭載し、トレモロ・アームを半分の長さに切り、スプリングを3~4本にして使っていた。
ピックはダンロップのトルテックス0.88mmを使用。
エレクトリック弦は、GHSブーマー(.010 、.012、.016、.024、.034、.044)。

ピンク・フロイド初期のアンプは12インチ・スピーカー4つをセルマーのアンプと組み合わせていた。
回転スピーカーも好んで使い、ヤマハ200Wロータリー・スピーカー・ユニットやマエストロ・ローヴァーを使っていた。
エフェクターは、テープ式ディレイ・ユニット、ボスDD-2(デジタル・ディレイ)、MXRフェイズ90、エレクトロ・ハーモニックスのエレクトリック・ミストレス・フランジャー、ビッグ・マフのデイストーション、オレンジのトレブル&ベース・ブースター、ダラス・アービターのファズ・フェイズ、ボスHM-2へヴィ・メタル、DM-2デジタル・メタライザー・ディストーションなどを使用。
さすがプログレの最高峰だけあり、エフェクターは多枝に渡るがレコーディングでは
ボストンのトム・シュルツが開発したロックマンを使用したりもする。
※さらに詳しくは
ここ!

「
エディ・ヴァン・ヘイレンのやっていることは、ちょっと気になるけど、他は興味無し。最近の連中で俺をその気にさせる奴なんて、誰もいないよ」(デヴィッド・ギルモア談)

むろんどのアルバムも何度となく聴いているが、僕が一番ぶっ飛んだデヴィッド・ギルモアの演奏は、1979年発表の2枚組アルバム『ザ・ウォール(The Wall)』(全米1位、売上2300万枚)からシングル・カットされた『
アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール パート2』である。

タメの効いた、ブルージーでありながらタイトな緊張感をもつギター・ソロは、有無をいわせぬ歴史に残るギター・ソロだと思う。
フレイジングはブルースであるが、究極まで練り上げられた構成は正にプログレの高みへと昇華されており、何度聴いても鳥肌が立つ。
アルバムとは微妙に違うそのシングルのギター・ソロを、わざわざ買って何度も何度も聴きかえした覚えがある。

早けりゃ、いいってもんじゃない。
ってのは、デヴィッド・ギルモアをして、いわんとするものである!
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- 2007/06/05(火) 12:47:57|
- 大人のロック。
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| コメント:2
David Gilmore のギターサウンドやアレンジは最高ですね。
そういう側面では彼の右に出る者はいない、といってもいいのではないでしょうか。
>アルバムとは微妙に違うそのシングルのギター・ソロ
そうなんですね。知りませんでした。
確かに良く練られた素晴らしいソロですよね!
Another Brick in the Wall Pt.2 は、私はバッキングギターもすごく好きです。
カッティングリフが耳に心地いいです。
余談ながら、Bryan AdamsのSomebody のリフがこのリフに似てますが、
ひょっとしてこの曲が元ネタだったのかな?
- 2007/07/15(日) 16:31:25 |
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- Penguinland #-
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penguinlandさん
>David Gilmore のギターサウンドやアレンジは最高ですね。
そういう側面では彼の右に出る者はいない、といってもいいのではないでしょうか。
当時のプログレは、ER&PやPFMにしてもムーグ、シンセが主流でした。クリムゾンとは別な意味でギターをメインにフィーチャーしたという意味でピンク・フロイドの存在、ギルモアの存在意義は大きいですね。
>>アルバムとは微妙に違うそのシングルのギター・ソロ
>そうなんですね。知りませんでした。
確かに良く練られた素晴らしいソロですよね!
Another Brick in the Wall Pt.2 は、私はバッキングギターもすごく好きです。
カッティングリフが耳に心地いいです。
余談ながら、Bryan AdamsのSomebody のリフがこのリフに似てますが、
ひょっとしてこの曲が元ネタだったのかな?
そのバッキングのテレキャスター・カッティングは、シックのナイル・ロジャースあたりのソウル・ミュージックを彷彿します。
- 2007/07/24(火) 11:28:35 |
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- noodles2 #-
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