
自らの信念を貫くこと。それは容易ではない。
勢いのあるときは、ぶれることなく、息切れすることもなく、周囲の人間ですらそのパワーに吸い寄せられるようにシンパシーと化し、個では不可能な状況さえ打破することが可能となり、さらに前進する。
しかし、勢い回り続ける独楽もやがては失速し、ぶれる。
独楽も重力と空気抵抗には抗えず、最後には静止するのだ。
それは、いつかは尽きる人の生と重なる。
独楽の失速・静止は、まるで人生の比喩のようだ。
1970〜1980年代に、僕が慣れ親しんだロック・バンドたちの昨今の新作を聴いていると、つい “ ぶれない独楽 ” という答えのでないテーマに突き当たってしまう。結論からいってしまえば、ぶれない永久独楽なぞあり得ないのだ。
同意で人の営みが有限である以上、かつての勢い、栄華もまた必ず尽きる。
だが、状況に抗わずにあるがままに、回り続ける努力は可能であり、その行為こそが “ 信念 ” なのだと、僕は最近思えるようになった。
そう “ 信念 ” とは “ もがき ” と、僕の中では同意なのだ。
昨年4月の
ナイト・レンジャーあたりを皮切りに、クラシック・ロック・ムーヴメントが動きはじめた。
5月、
ラッシュ、新作リリース。
6月、
ボン・ジョヴィ、新作リリース。
6月、
オジー・オズボーン、新作リリース。
9月、
ヴァン・ヘイレン復活。
11月、
レッド・ツェッペリン復活。
11月、
イーグルス、新作リリース。
今年に入り、
4月、
ホワイト・スネイク、新作リリース。
4月、
デフ・レパード、新作リリース。
5月、
マイケル・シェンカー、新作リリース。
5月、
ドッケン、新作リリース。
6月、
モトリー・クルー、新作リリース。
6月、
ジューダス・プリースト、新作リリース。
このあとも秋までに、メタリカ、クイーン+ポール・ロジャース、AC/DC、ガンズ・アンド・ローゼスなどのリリースが続く模様。
あたかも、1980年代にタイム・スリップしたかのようなリリース・ラッシュ!

そして、今回の
ジャーニー『REVELATION』である。
だが、何故か日本盤が発売されていない。かつて絶頂期にワールド・ツアーの最初と最後を日本公演で飾り、締めくくったほどの人気バンドに、冷たくはないか?
さて、既にご存知のことかと思うが、現在のジャーニーにはスティーヴ・ペリー(Vo)は存在しない。
ドラマーもディーン・カストロノヴォに替わっている。

新ヴォーカリストは、40歳のアーネル・ピネダというフィリピン人である。
アーネル・ピネダは幼い頃から、母のリクエストに答え、ラジオで聴き覚えたバーバラストライザンドやカーペンターズを歌っていた。
アーネルの才能に気づいた仕立て屋の母は、コンテストのたびの彼に衣装を新調するほど熱心に応援したが、アーネルが13歳のときに他界してしまう。
それを期に一家の家計はどん底へと落ち、一時アーネルはホームレスとなり、マニラ・パークでスクラップを集めて売り、暮らしていたこともあるそうだ。正にフィリピン版ホームレス中学生である……。
そして亡き母から受けた “ 歌うこと ” で、大人になったアーネルは、シンガーの道へ進むこととなり、マニラ、香港の小さな箱でポリス、レッドツェッペリン、ジャーニーらの曲を演奏するカヴァー・バンド、ZOOのヴォーカリストとして生計を立てていた。

そこにジャーニーのニール・ショーン(G)が、偶然YouTubeでZOOのクリップを発見。昂奮したニールは真夜中にもかかわらずキーボードのジョナサン・ケインに電話したという。
そして昨年暮れに、米国でオーディションし、アーネルは見事ジャーニーの新ヴォーカリストとして正式加入を果たしたのである。

ニール・ショーンから最初に国際電話でオファーを受けたとき、
「冗談だろ? って取り合わなかったんだ」(アーネル・ピネダ談)
だが、天から降って湧いたようなチャンスに、米国行きを決意。
ビザ取得のため領事館に向かうが、渡航目的を聞かれ、ジャーニーのヴォーカル・オーディションを受けるためだと答えると、にわかに信じてもらえなかったそうだ。
領事館員に、「じゃあ、ジャーニーの “ Wheels in the sky ” って曲を知っているか?」といわれ、その場で一節を歌って聞かせたところ、一発でビザを発給したという。

実は、プロデューサーのケヴィン・シャーリーは、アーネルを米国に呼んで、新曲2曲だけ録音し、フィリピンへ帰すつもりだったそうだ。ところがあまりに高度な歌唱力を供え、なんといってもメンバーがあたかもスティーヴ・ペリーの分身のように彼を受け入れてしまった。
結局、新曲全曲と往年の名曲のリメイク、ツアーとトントン拍子にアーネルが加入した新生ジャーニーは動き出したのだ。
涙がでそうな
シンデレラ・ストーリーではないか。
おまけに日本人のような風貌のアーネルには、自ずと感情移入してしまう。
マニラの場末のクラブで歌う、
ZOO時代のアーネルを観ると泣けてくる。
彼の40年の苦労と努力、才能が、海を渡り、正に雲の上の存在だったニール・ショーンによって見いだされたのだ。

ディスク:1
01.
Never Walk Away ←チェック♪
02.
Like A Sunshower ←チェック♪
03.
Change For The Better ←チェック♪
04.
Wildest Dream ←チェック♪
05.
Faith In The Heartland ←チェック♪
06.
After All These Years ←チェック♪
07.
Where Did I Lose Your Love ←チェック♪
08.
What I Needed ←チェック♪
09.
What It Takes To Win ←チェック♪
10.
Turn Down The World Tonight ←チェック♪
11. The Journey (Revelation)
12.
Let It Take You Back (Exclusive bonus track for Europe) ←チェック♪
ディスク:2
01.
Only The Young ←チェック♪
02.
Don't Stop Believin' ←チェック♪
03.
Wheel In The Sky ←チェック♪
04.
Faithfully ←チェック♪
05.
Any Way You Want It ←チェック♪
06.
Who's Crying Now ←チェック♪
07.
Separate Ways (Worlds Apart) ←チェック♪
08.
Lights ←チェック♪
09.
Open Arms ←チェック♪
10.
Be Good To Yourself ←チェック♪
11.
Stone In Love ←チェック♪
以上、チェックしていただいただろうか?
そうなのだ。
アーネル・ピネダの声色が、スティーブ・ペリーにそっくりなのである。
詰まりアーネルによって、変わらないジャーニーが存続している。
クリカンこと栗田貫一の物真似で、ルパン三世を成立させているような状況が、いまのジャーニーである。
いまや四半世紀を経たロックも歴史と化し、止まってしまった感がある。
21世紀だからとはいえ全く新しい、ロック以上の音楽は生まれていないのだ。
このブログ含め、ロックは語り継がれるものになってしまった。
今回のジャーニー『REVELATION』も、意外な事実(REVELATION)どころか、僕にはお約束のジャーニー節が満載で、非常にありがたいし心地よい。
ジャーニーもまた “ ぶれない独楽 ” となり、信念=あがきを貫いている。
無論、嬉しくないわけがない。懐かしさ、たくさんのパワーをもらっていると思う。

僕らオヤジ・ロックファンは、どうしても往年の彼らをもとめてしまうし、バンド側も心得ているのか、それ以上になれないのか? どうだい。君の好きなあの頃の音だろ? とでもいうようにお約束の音源をリリースしてくる。
ただ、そこに安住する僕もまた、既に止まってしまったオヤジなのだろうか……。
大人のロック。なおも暗中模索は続く。
←One Day One Click! We Love“ROCK”!! テーマ:YouTube動画 - ジャンル:音楽
- 2008/07/17(木) 13:00:56|
- 大人のロック。
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| コメント:4
ショック!知らなかった!!
Journey のボーカルがフィリピン人になっていたなんて!
しかも Neal が YouTube で見つけたなんて!!
領事館で Wheel in the Sky を歌ってビザ発給なんて!!
前のボーカルのSteve AugeriもSteve Perry系の声だったけど、
Arnel Pineda は確かに Steve Perry に似てる!!
歌い回しが違ったり、部分的に声の違いが出てるものの、
大方は Steve Perry 本人に聞こえますね―。
ヌードルスさんの文を読みながら、
これじゃ山田康夫を受け継いだ栗田貫一みたいだ、
と思ってたら、ヌードルスさんも同じ指摘を・・・笑
本当に、誰でもネットで発信できる時代、
たかが物真似でもやってみるもんですねー。
当の Steve Perry はどんな気持ちで Arnel を見てるのか・・・
こういうホットニュースがあったからかもしれませんが、
アルバムがチャート上位になって復活してるみたいですね。
ニューアルバムを試聴してみましたが、
Steve Perry の幻影をみたかのようなボーカルは
確かに「お約束のJourney節」を発揮させていますね!
正にEscape~Raised On Radio辺りの黄金期の魅力です。
この黄金期に夢中になった人たちが買ってるのかな。
ところで、販売元はソニーじゃなくインディーズなんですね。
日本盤が出てないのは、そういう事情が背景にあるんでしょうね。
だけどだけど、そこに疑問を投げかけるヌードルスさんの思い、
私もとっても共感します。
おお!黄金期のJourneyだ!懐かしい!嬉しい!
だけど、これはロックなのか?
60年代から80年代前半にかけて次々に新しい音を生んだ、
あの反体制で革新的で刺激的なロックなのか?
ロックは進化してこそのロックじゃないのか・・・。
いずれロックは歴史となり新たなジャンルがメインストリームになる―
個人的にはそんな気がしていますが、
それがいつそうなるのかは見当もつかないです(笑)
願わくば、その新ジャンル創生のとき、
自分もハングリー精神を維持しつつ
その流れになんらかの形で加わりたいと考えています。
(こんな大風呂敷広げたこと書いていいのかな 笑)
- 2008/07/21(月) 01:46:29 |
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- Penguinland #-
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Penguinlandさん
熱烈なコメント、感謝致します!
今回の新譜は、フロンティアーズという自主レーヴェルからの発売のようです。
全米では、いま流行りのウォルマート独占販売です。イーグルスの成功で、ジャーニー含めロック・シーンではウォルマート販売が新しい流通になってきています。
9月発売予定のAC/DC新譜もウォルマート販売になるようです。
まあ、AC/DCの場合は日本盤はワーナーから出ると思いますが……。
- 2008/07/29(火) 12:50:25 |
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- noodles2 #-
- [ 編集]
いつも勉強させていただいております。
もうすぐ40になるギタリストです。
昔から二ールショーンが大好きで、前Voの作品まではチェックしていました。
が、正直、Voに関して「スティーブの声に似てるな」
とまでしか感じず、楽曲もイマイチ、ピンとは来なかったんです。。
で、今、新Voのライブ映像の一曲目を見て久々に鳥肌がたちました!
彼のストーリーを先に知っていたからか?
想像以上の声だったからか?
「あの頃」のサウンドが聞けたから?
二ールが元気に弾きまくってるから?藁
全部ひっくるめての鳥肌。
新Voは声にパンチがありますね、太いですし。
すっかり感情移入してしました!藁
がんばって欲しいですね!応援します。
管理人様の情報に感謝です!
これからも楽しみにしてます!
- 2008/08/28(木) 15:13:59 |
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- GENTA #-
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GENTAさん
はじめまして。
ご訪問&コメント感謝致します。
今回のジャーニーは、日本版が未発なため、ほとんど話題になりませんでした。アメリカ本国での盛り上がりを見てると残念です。
スティーヴ・ペリー時代とアーネルを聴き比べていますが、結構アーネルのジャーニーの方がハマりますね(笑)。
やはり、最新のジャーニーころ最上ってことでしょうか。。
- 2008/09/09(火) 19:05:09 |
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